仮想通貨は商品か証券か?
各国で仮想通貨をどのように取り扱っていくのか議論が高まっています。アメリカでも、証券取引委員会(SEC)の高官がICO(新規仮想通貨公開)は今までの証券法によって合法化されるべきと発言し、また商品先物取引委員会の高官が仮想通貨の定義を急ぎ策定すべきと発言しています。仮想通貨を商品として扱うのか、それとも証券として扱うのかによって定義も見解も分かれており、不透明な状況が続いています。
- SECの見解
- CFTCの見解
- どちらの管轄下に?
SECの見解

SECは日本でいう証券取引等監視委員会のことで、1920年のウォール街大暴落によって世界恐慌を引き起こしたことから1934年に発足したものです。不正な株式や証券の取引を正そうというのが本来の意義です。
SECは仮想通貨のほとんどは証券とみなしています。SECの権限の範囲内という認識です。仮想通貨、特にICOはデジタル資産という形式での証券であるため厳格な法律で取り締まって規制すべきと主張しています。実際に多くのICOを未登録証券であるとして閉鎖させています。SECとしては登録や開示を行わないICOは証券法の詐欺防止要件を満たしておらず、徹底的に追求していく構えです。
SECの最大の責務は「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」である。つまり、ディスクロージャーの透明性を確保し、公平な市場を実現することがSECの機能である。 「The mission of the U.S. Securities and Exchange Commission is to protect investors, maintain fair, orderly, and efficient markets, and facilitate capital formation.」(SEC HPより引用 “Why?at we do”) SECはインサイダー取引や相場操縦など不公正取引に対する処分権限を有しており、司法に準じる権限を持った独立した強力な機関である。 一方、日本では証券取引等監視委員会が同様な機能を期待されているが、現状では金融庁の傘下機関であり、また違反者に対する権限のない機関である。 そのため、日本でもSECのような権限をもった独立機関等による投資家保護策の充実が求められている。
米国証券取引委員会(SEC)とは・意味|MBAのグロービス経営大学院
CFTCの見解

CFTCは1974年に設立された政府機関のひとつで、アメリカ国内での先物取引の許認可に関する権限を持っています。不正な市場操作や詐欺から市場参加者を保護する役割を担っています。
CFTCによるとビットコインなどの仮想通貨は商品であり、SECが主張している投資家保護の適用外としています。CFTCの高官は、ビットコインなどの仮想通貨は決済に利用され、長期的には資産となるという見解を発表しています。現行のアメリカの法律では規制するのは困難であるというのがCFTCの立場です。
米商品先物取引委員会(CFTC)とは|金融経済用語集
どちらの管轄下に?

SECとCFTCのどちらが仮想通貨を監視する主要な立場となるのかは、適用される定義によって見解が異なってきます。
ICOの時点では証券で、いったん市場に受け入れられると商品とみなすというのが現行のアメリカの法律の限界ですが、これにはかなりの無理があります。商品でもあり、資産でもあり、またバーチャルな存在でデジタルであるという点も困惑の要因となっています。仮想通貨はブロックチェーンと切り離して考えることはできません。議論が進まなければテクノロジーの進化も遅れてしまいます。最終的には規制当局でなく、議会が決めていくと仮想通貨業界の関係者は推測しています。