ロシアの規制当局が仮想通貨取引の解析ツールを導入

ロシアは長く仮想通貨に対して批判的な姿勢を貫いていました。

Bitcoinは規制されていませんが、仮想通貨での商品やサービスの決済を禁止するなど、その対応ははっきりとしたものではありません。

ロシアの規制当局である「ロシア連邦金融監視サービス(Federal Financial Monitoring Service, FMS)」は2014年に「仮想通貨の使用は、その取引を違反とする根拠となりえる」とまで発言しています。

しかし最近ではその風向きも変わりつつあるようです。

そのきっかけとなったのが2018年8月28日にBBCニュース・ロシアによって報道された、ロシア連邦金融監視サービスによる仮想通貨取引を追跡するツールの導入です。

ロシアの導入した仮想通貨取引の追跡ツールとは?


BBCニュース・ロシアによるとロシア連邦金融監視サービスは1億9550万ルーブル(約290万ドル)を投じて、モスクワ安全保障情報分析研究所(Institute Information and Security Analysis, SPI)にツールの構築を依頼したと言われています。

モスクワ安全保障分析研究所はモスクワに本拠を置く企業で、治安部隊や法執行機関、保険会社など幅広い分野で利用される分析ツールである「iRule」の開発元としてロシア国内で高い評価を得ています。

仮想通貨やブロックチェーン技術にもいち早く目を付けて事業へ組み込むなど、競争の激しい仮想通貨業界の中でも生き残る公算の大きな企業と言われます。

今回開発された解析ツールは2018年末には完全に実装される見込みで、BitcoinやEthreumなど主要な仮想通貨全般に対応すると言われています。

解析ツールは取引の履歴だけでなく取引を行った個人の名前やクレジットカード情報、銀行口座、携帯電話の番号、更にウォレット情報などの監視も可能で、ロシア連邦金融監視サービスはこの分析ツールに、従来断片的に存在していた犯罪の痕跡の間に関連性を見いだすことを期待していると報じられました。

分析ツールの導入でロシアはどうなる


今回ロシア連邦金融監視サービスが導入を決定した解析ツールは、アメリカのPlantif社がアメリカの警察当局へ提供する同種のツールと比較されると言われています。

アメリカの解析ツールは2008年に発覚したバーナード・マドフの詐欺事件を発見するのに使われました。

仮想通貨を使った犯罪としてはダークネットにある、武器や麻薬、暴力シーンなどを含むビデオなどの違法な商品を購入できるサイトで決済に使われるといったケースが代表的で、2017年にはデンマークで仮想通貨を使って麻薬を売りさばいた売人が逮捕されています。

一方で仮想通貨が犯罪に使われる割合はとても低く、またロシア連邦金融監視サービスが恐れるようなマネーロンダリングに仮想通貨が使われる事態もとても少ないとも言われており、このツールがどれほど効力を発揮するかは不明です。

ただしこの分析ツールの導入に見られるように、ロシアの仮想通貨への考え方が変化しているのは間違いありません。

2018年3月にはデジタル金融資産関連法案がまとめられるなど従来の不明瞭な基準による禁止から、きちんと線引きをする形へと方針が変わってきています。

ロシアの動向の変化には注視するべきでしょう。