顧客の資産を保護しなければならないなどの理由から、銀行は仮想通貨のような価格変動の大きい投資対象はあまり好みません。
それは仮想通貨に対して寛容な国であるスイスでも同じことで、長く銀行が仮想通貨を取り扱うことはありませんでした。
しかし2017年、スイスにあるFalcon銀行が仮想通貨の取り扱いを始めたことでその風潮が変わりつつあります。
Falcon銀行が仮想通貨を取り扱う背景
Falcon銀行はチューリッヒに本社を置く大手のプライベートバンク(富裕層・超富裕層を対象に、最低1名の無限責任を有する個人が資産を保存したり運用する金融機関)で、アブダビ、ドバイ、ロンドン、ルクセンブルクに支社を置いています。
「プライベートバンク」という業態はそもそもスイスを発祥としており、スイスにはFalcon銀行のほかにも多数の同業他社が存在しています。
そのうえプライベートバンクが他の形態の銀行に対して有していた、顧客情報の隠匿性も失われており、プライベートバンクそのものの優位性も揺らいでいました。
2015年から2016年にかけてはマレーシアの政府系ファンド1MDBのマネーロンダリングにチューリッヒのプライベートバンクが関与していたことが明らかになり、Falcom銀行もシンガポール支店の閉鎖を余儀なくされました。
Falcon銀行が仮想通貨の取り扱いを始めた背景には、そういったプライベートバンクを巡る事情やスイス国内の銀行が仮想通貨に対して後ろ向きであった点があります。
Falcom銀行は仮想通貨を取り扱うことで戦略を転換、他のプライベートバンクや銀行との差別化を図り、個人投資家の中でも仮想通貨の取引に興味のある人を取り込もうとしたのです。
Falcom銀行の取り組み
Falcom銀行は仮想通貨の取り引きをするために、スイス国内でも大手の取引所であるBitcoin Suisseと提携しました。
スイスの規制当局であるFINMAもFalcom銀行の取り組みも承認しており、顧客はオンラインや店舗でBitcoinを取引できるうえ、チューリッヒの本店にあるBitcoinATMを利用することもできます。
Falcom銀行は仮想通貨の取り扱いを始めてからBitcoinだけでなくEthreumやBitcoinCashなど、取引できる仮想通貨の種類を増やしています。
Bitcoin SuisseのNiklas NikolajsenCEOはFalcon銀行が仮想通貨を取り扱うことに対し「仮想通貨の全世界に対する歴史的な節目である」と発言するなど、Falcom銀行の取り組みは非常に注目に値するものです。
スイス国内ではFalcon銀行が仮想通貨の取り扱いを発表した2日後にはスイスの銀行であるSwissquoteがルクセンブルクにある仮想通貨取引所Bitstampと提携を結んで仮想通貨の取り扱いを始めると発表しています。
Falcon銀行はプライベートバンクのため他の銀行と比べてフットワークを軽く動くことができますが、今後仮想通貨の取引が安全になればFalcon銀行に倣う銀行が他に表れるかもしれません。