仮想通貨分野の中心地として発展を続けるクリプトバレー

仮想通貨市場は2018年中に大きく下落しましたが、ブロックチェーン技術自体は様々な分野への応用が期待されています。

世界各国もブロックチェーン技術を使って利益を得ようとしています。

中でも仮想通貨を推進する国であるスイスには「クリプトバレー」と呼ばれる地域が成長しています。

クリプトバレーとは

クリプトバレーと呼ばれるのはスイスで最も小さな州であるツーク州の州都ツークです。

ツークにはBitcoinやEthereum、、Cardanoなどの仮想通貨開発チームが拠点を置くほか、Bitmainなどのマイニング企業なども本社を置いており、仮想通貨、ブロックチェーン関連の企業だけで600社以上も名を連ねています。

このうちの上位50社の時価総額は2018年1月時点で440億ドルを超え、50社のうち5社はユニコーン企業であるなど成長の著しさを窺い知ることができます。

2017年4月時点では350社ほどしかなかったと考えるとその勢いはめざましいものがあります。

なぜツークがクリプトバレーとなったのか?

ツークがクリプトバレーとなった背景にスイスが産業が発展していて国際競争力が高く、仮想通貨を推進しているという点が大きいです。

加えてツーク州は法人税が安く、ツーク州で事業を行う企業には15%、ツーク州で事業を行わない企業には8.8%しか課していません。

スイス全体では21%、日本では23%と考えるとツーク州の法人税率は破格でしょう。

仮想通貨関連以外にも多くの企業がツーク州に進出しており、世界127か国から3万社以上がツーク州に法人登記していると言われています。

またスイスは永世中立国で国際情勢の影響を受けにくく、地方分権と直接民主制を採用しているために政治の行方を予想しやすく、政治も国民の意見に敏感です。

そういったスイスに特有の政治的な事情も分散型ネットワークと相性がよく、ツーク州のクリプトバレー化に一役買っています。

クリプトバレーのツークへの貢献

クリプトバレーはツークの地理的条件や税制によって発展している一方で、クリプトバレーの企業はブロックチェーン技術を使ってツークへ貢献しています。

2017年には仮想通貨関連の企業やICOへの支援など仮想通貨に関する金融サービスを行うBitcoin Suisse AGやツーク州、ツーク市などの地方自治体などが一体となった非営利組織Crypto Valley Associationが立ち上げられました。

Valley Associationは産官学でブロックチェーンを活用したエコシステムの構築を目指しています。

Crypto Valley Associationに参加する企業のひとつであるConsenSys社はブロックチェーン技術を使って資格情報などを管理するデジタルIDシステム「uPort」を開発し、ツークに試験導入しました。

2018年6月にはuPortを使っての電子投票が行われるなど、生活にブロックチェーン技術を取り入れる試みが積極的に行われています。

ほかにもツークではBitcoinで公共料金を支払うことができるなど、市民サービスへの仮想通貨の導入も進んでいます。

スイスはツークを積極的に後押ししており、クリプトバレーを将来の仮想通貨取引の中心地にしようとしています。

今後スイスのように仮想通貨に寛容な国が表れたとき、クリプトバレーがひとつのお手本となる可能性はあるでしょう。