仮想通貨の価格操作の可能性を指摘したテキサス大学の博士候補生Amin Shams氏

Amin Shams氏は、テキサス大学オースティン校のビジネススクール、マコームズ・スクール・オブ・ビジネスのPhD candidate(博士候補生)です。2018年、同大学のJohn Griffin教授との共同論文において、2017年の仮想通貨の高騰は人為的な価格操作である可能性を指摘しました。

Amin Shams氏の論文で指摘された仮想通貨の価格操作について

・ビットコインとテザーに相関関係が認められる
・テザー社は否定
・仮想通貨市場崩壊の危機

ビットコインとテザーに相関関係が認められる

Shams氏は論文の中で、2017年12月のビットコインを始めとした仮想通貨の高騰と、ステーブルコインのテザーの発行量の相関関係を分析しています。その内容を簡単にまとめると、ビットコインの価格が急落したタイミングで、テザーを発行してビットコインを買い漁ることで、ビットコインの価格が急上昇したというものです。少なくともビットコインで50%、他の主要な仮想通貨で64%の価格上昇がテザーと関連付けられることがわかりました。一般的な需要の高まりで価格が上昇したとは考えにくく、価格を操作する目的でテザーが使われると考えた方が整合性のある説明になるとのことです。

テザー社は否定

Shams氏の論文が発表される前から、テザーに疑惑があることは仮想通貨業界では周知の事実です。テザー社は、テザーの裏付けとなるドルを保有していないのではないか、ということはこれまで何度も言われてきました。テザー社と株主を共通する仮想通貨取引所のBitfinexにて、送金されたテザーにレバレッジをかけてビットコインを大量に購入しているとの疑いです。Shams氏の論文は、ブロックチェーン上に残っている取引記録からパターンを分析したもので、具体的な価格操作の証拠はありません。また、当のテザー社とBitfinexも否定しています。

仮想通貨市場崩壊の危機

しかし、Shams氏の論文では、2017年のBitfinexでのビットコインの大量購入の時期を調べると、Bitfinex以外の取引所では見られないテザーの発行時期との相関関係が見られることを指摘しています。また、もし自然なニーズに従ってビットコインの購入が増えるとしても、こうした結果になるのは不自然であり、価格を下支えするためにテザーが恣意的に使用されていると考える方が整合性が取れるとのことです。今回の論文が事実であるとしたら、仮想通貨市場全体の崩壊につながる恐れがあるとして危惧されています。