仮想通貨市場の課題のひとつに、仮想通貨が不安定な投資対象であると認識されてしまう信頼性の問題があります。
Tezos財団は200億円もの資金をICOで集めるなど期待されていましたが、その後のベータネットの公開の遅れや集団訴訟、財団の内紛によって投資家から不審の目を向けられるようになりました。
そこでTezos財団は信頼を取り戻すべく、PwCの監査を受けることを発表しています。
会計事務所PwCとは?
PwCは正式名称を「プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers)」と言う、ロンドンを本拠地とするLLP(有限責任事業組合)です。
企業監査のほかに税務、コンサルティングを主な業務とし、世界158か国に18万人のスタッフを擁する「世界4大会計事務所」のひとつです。
日本にもPwC Japanが置かれており、PwCの名前を冠した法人が事業を行っています。
PwCのほかに「デロイト・トーシュ・トウマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)」、「KPMG」、「EY(Ernst & Young)」によって構成されています。
Tezos財団は2018年7月23日、財団のプレスリリースでPwCスイス社がTezos財団の財務や運営に関する外部監査を行うことを発表しました。
財団は今回の決定が「大規模なブロックチェーン組織がPwCによって監査される初めての例」であることを強調、PwCによる外部監査を受けることで「Tezosコミュニティ、およびそのオブザーバーにとって信頼のできる業務、財務を行うことができるようになる」としています。
PwCはブロックチェーン分野に力を入れる会計事務所
Tezos財団への監査を行うPwCはブロックチェーン分野に力を入れ始めている会計事務所です。
2018年5月、PwC香港社とPwCシンガポール社は偽造防止やサプライチェーン、ioTなどの分野にブロックチェーンを応用するVeChain社の株式を一部購入し、戦略的パートナシップを締結しました。
更に2018年10月にはアメリカドルと価格を連動させたステーブルコインを開発するCred社と提携を結び、会計事務所としての知見やリスク管理などの専門性を活かして「100%の透明性と価値の裏付け」を提供すると表明しています。
近年では多くの企業がブロックチェーン分野へ進出する一方で、未だに多くの投資家は仮想通貨に対して不安定で信頼できないというイメージを抱いていると考えられています。
PwCは公式サイト上でCred社との提携が「仮想通貨業界に自信と信頼、安心をもたらすことで、次なる1億人の仮想資産ユーザーの指針になるというメッセージを掲載しました。
また2018年12月24日、PwCのアジア地域におけるフィンテック、仮想通貨部門のトップを務めるHenri ArslanianはBloombergのインタビューに応え、2019年の仮想通貨市場は各国の法整備が進み、規制もはっきりした基準の下で行われるようになるため、より機関投資家を引きつけるだろうと発言しています。
PwCは監査を通してTezosのみならず、ブロックチェーンや仮想通貨全体への不安を払拭しようとしています。
今後、仮想通貨への信頼性の向上にPwCがどのように寄与するのか、注目する必要があるでしょう。