海運業界の共同プラットフォーム「TradeLens(トレードレンズ)」

 

TradeLens(トレードレンズ)とは、海運最大手のマークスとIBMが共同出資して設立したブロックチェーン技術による物流プラットフォーム運営会社のことです。2018年8月に、各国の海運業者や港湾運営会社など90以上の企業や組織が参加に合意したと発表しました。2019年現在、すでに商業的な利用が可能です。

TradeLens(トレードレンズ)と海運業界でのブロックチェーンの利用について

・マークスとIBMが共同開発した海運業のための共同プラットフォーム
・世界200以上の拠点での運用計画
・海運業界でのイニシアティブを取る目論みが窺える

マークスとIBMが共同開発した海運業のための共同プラットフォーム

マークスとIBMは、すでに2017年3月に、国境を超えたトランザクション向けブロックチェーンツールの開発のために協力することを発表していました。また、2018年1月には合弁会社を設立したことのアナウンスが両社からありましたが、それが具体化したのがこのTradeLens(トレードレンズ)です。このプラットフォームには「クリアウェイ」という貿易書類モジュールがあり、それが、貿易関係者の機密やプライバシーを損なうことなく貿易手続きの遂行や情報交換を可能にしています。

世界200以上の拠点での運用計画

TradeLens(トレードレンズ)は世界の200以上の拠点で運用される計画で、海運業ではマークスのほかPILやHamburg Suedが、陸送業ではオランダのシーバ・ロジスティクスやクエートのアジリティが、また、オランダ、オーストラリア、シンガポール、ペルーなどの税関当局も参加します。2019年1月には、新たにサウジアラビアの税関当局がTradeLens(トレードレンズ)の試験運用を発表しました。

海運業界でのイニシアティブを取る目論みが窺える

TradeLens(トレードレンズ)のほか、2018年には海運業者ら10社によるブロックチェーンを利用したプラットフォーム「Global Shipping Business Network」も設立されました。海運業界においてブロックチェーン技術の利用が着々と進展していることが窺えますが、規模の点ではTradeLens(トレードレンズ)が一歩リードしていると言えます。共同プラットフォームを利用するには開発者に利用料を支払うわけですから、それを最初に構築した企業が多くの利益を得るとともにこの分野のイニシアティブを取るのは明らかです。そのため、マースクとIBMは商業ベースでの運用をこれほどに急いだのでしょう。