仮想通貨で注目を集めるクリプトバレーとは?

スイスのチューリッヒとルツェルンの間に、ツークという州があります。

ツーク州はスイスで一番小さな州で、人口はわずか12万人しかいませんが、州都ツークの人口約29000人のうち、なんとおよそ3分の1にあたる9000人が外国籍という多国籍都市でもあります。

ツーク州が多国籍都市となったのは、他の国と比べて税制で優遇されているためです。

他のヨーロッパ諸国では4,50%にもおよぶ所得税がツーク州では23%、更に法人税も日本の23.9%、他のヨーロッパ諸国で30%、スイスの他の州での21%と比較してツーク州では15%、ツーク州で事業活動を行わない企業では8.8%と、税率が低く設定されています。

そのためシーメンスやジョンソン&ジョンソンと言った多国籍企業が本社を構えるほか、近年では仮想通貨やブロックチェーンに関連した企業も続々進出してきており、アメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーになぞらえ、ツーク州はしばしば「クリプトバレー」と呼ばれます。

クリプトバレーの実態


スイスのツーク州でブロックチェーンのスタートアップへ投資をするCrypto Valley Venture Capital(CVVC)の調査によると、2017年4月時点でツーク州に進出した仮想通貨関連企業が350社ほどだったのに対し、2018年9月には倍増して600社ほどになったと言われています。

ツーク州ではEthreum FoundationやTezos Foundationと言った有力企業や機関が本拠を置くほか、CVVCが有望なベンチャー企業に積極的に投資を行っており、成果を挙げています。

更にCVVCが2018年1月に発表した、クリプトバレーのトップ50社を対象に行った調査の報告書では、クリプトバレーの上位5社は市場評価額が10億ドルを超えており、上位5社の中にあるBitmainというマイニング企業は2015年から2年で収益を17倍に増やし、2017年に25億ドルもの収益を記録しているとありました。

ほかにも地元自治体や地元企業のBitcoin Suisse AG、スイスの大学、有力企業が産官学を挙げて非営利組織のCrypto Valley Associationを立ち上げ、仮想通貨やブロックチェーンを使った市民サービスを提供するなど、ツーク州は仮想通貨を使った先進的な取り組みを進めています。

スイス政府のスタンス


ツーク州がクリプトバレーとなった背景には、スイス政府が仮想通貨へ進歩的なスタンスを取っていることが大きく関係しています。

スイス政府は仮想通貨による取引を合法化したり、ブロックチェーン企業を誘致して雇用を促進するなど仮想通貨に対して開放的な政策を取っています。

またチューリッヒを拠点とするスイスの老舗プライベートバンクMaerki Baumannが仮想通貨の交換を開始するなど、スイスでは金融機関も仮想通貨に対して門戸を開き始めています。

そのためスイスはヨーロッパで最も仮想通貨に対して友好な国、世界でICOに最も有利な国だとも言われています。

スイスが仮想通貨を活かしてどのような未来図を描いていくのかは、注目に値するでしょう。