スマートコントラクトの法的基準について

ブロックチェーンはスマートコントラクトという概念を生み出しました。

スマートコントラクトとは、契約の自動化のことで、法律上の合意がコンピュータコードに託され、決められた行為を実施すると自動的に契約行為がなされる仕組みのことです。

スマートコントラクトに関連する契約の自動化が進められている間、その自動化をサポートする法的基準は遅れています。

従来の法律上の契約では、当事者が「買おう」「売ろう」といった意思表示を示せば、契約が成立していました。

しかしスマートコントラクトは、決められた条件を満たすと自動的に契約が締結されるため、どの行為の段階から契約が成立するのかといった基準が曖昧なのです

IBMがアコードプロジェクトに参加

IBMは、この問題に取り組むためのアコード・プロジェクトに参加し、スマート・コントラクトの法的基準の開発を促進しています。

アコードプロジェクトの使命は、スマートコントラクトの普及を促進するために技術的な法基準を確立することです。

このプロジェクトでは、任意の分散元帳と相互に運用可能なブロックチェーンとは無関係なミドルウェア層が開発され、スマートコントラクトがオン・チェーンだけでなく、オフ・チェーンでも動作できるようになりました。

 オンチェーンオフチェーン
送金や取引などをブロックチェーン上に直接記録するやりとりのこと。送金や取引などをブロックチェーン上に直接記録しないやりとりのこと。

なおアコードプロジェクトは、昨年設立されたスタートアップであるClouse Inc.により、国際的な法律事務所、標準団体、技術団体を、その協力者によって成り立っています。

法的基準を標準化

さらにIBMは、IBM Blockchain Platform Starter Planというアプリを使用して、Linux財団のHyperledgerファブリック上で、スマートコントラクトの法的基準を標準化した取引行為ができるようになりました。

Hyperledgerファブリックとは

Linux財団が主導する業界横断型のブロックチェーン技術を推進するプロジェクト。このグローバルなプロジェクトには、金融、銀行、IoT、サプライ・チェーン、製造、技術の各分野のリーダーが参加しています。オープンで標準化された企業レベルの分散台帳の枠組みと基準を作ることを目的としています。

生鮮食品ネットワーク

そしてIBMとClause Inc.は、生鮮食品管理の技術で、スマートコントラクトの法的基準化を設定したサンプル・アプリケーションを発表しました

取引の参加者は、アプリに掲載されている生鮮食品の商品サンプルを通じて、ユーザー間で食品を取引することができます。

またその取引行為には、Clause Inc.のプラットフォーム上に設定されているスマートコントラクトに準拠していることが保証されています。

保証されていることにより、取引が分散元帳で共有されている間は、契約が機密に保たれているのです。

食品を供給する側には、生鮮食品を管理するうえで守らなければならない温度と湿度の管理義務が設けられています。

IBMとClause Inc.が開発したサンプル・アプリケーションには、食品を供給する側が、守らなければならない温度と湿度の管理義務を遵守していることを自動的に検出できるオープンソースコードが含まれています。

もし取引をする場合、食品の供給側が遵守していることが確認できれば、法律上の売買取引が自動的に認められることになります

供給側が管理義務を順守していることが、契約行為の成立要件になるのです。

まとめ

スマートコントラクトは今までの法的な契約とは違い、自動的に締結、運用するため、契約が成立する法的な基準が明確ではありませんでした。

今後の普及には明確化していく必要があるため、今後は少しずつ基準が設けられると思います。今後の動向に注目していきましょう。