仮想通貨取引所Secret Technology Limitedが仕掛けた巧妙な罠とは?

 

香港で2000年台に活躍したアナリストであるRaymond Yuanが、2018年11月にクラウドマイニング詐欺を働いたとして告訴されました。

・Raymond YuanはSecret Technology Limitedのクラウドマイニングに顧客を勧誘
・Secret Technology Limitedのクラウドマイニングはポンジ・スキームの疑いがある
・12人がRaymond Yuanを告訴し、被害額は1億円に上る

仮想通貨取引所Secret Technology Limitedが舞台のこの事件、詳細を調べてみました。

Raymond Yuanの手口とは?

Raymond Yuanは2000年台に活躍した香港の投資アナリストです。「投資界の若き魔術師」とのニックネームを与えられ、著書を出版したりラジオで自身の番組を持ったりするなど、人気を博しました。そんなYannが広告塔になっていたのが、仮想通貨取引所のSecret Technology Limitedです。Secret Technology Limitedの主な商品はクラウドマイニングサービスでした。

クラウドマイニングとは、顧客から資金を集め仮想通貨のマイニングを行い、得られた通貨を出資者に分配するというサービスです。Yannは「Secret Technology Limitedは仮想通貨の創始者と提携している」「10ヶ月で元本を取り戻し、その後大儲けする」などと顧客を勧誘しました。しかし、実際には元本の1%しか戻ってきませんでした。Secret Technology Limitedはポンジ・スキームを行っていた疑いがあります。

巧妙に仕掛けられた罠

ポンジ・スキームとは、顧客への配当を次の顧客からの出資で賄うことで収益が出ているようにみせかける詐欺です。

クラウドマイニングは、実際にマイニングが行われているかがブラックボックスで分かりにくいため、このような詐欺の舞台になりやすいサービスです。Yuannの勧誘にのって、Secret Technology Limitedに出資された金額は690万香港ドル(約1億円)になり、中には60万香港ドルを出資した人もいます。

ポンジ・スキームにより被害を被ったと訴える人たちは12人。本来ならばSecret Technology Limitedに対して出資金を返金するよう訴訟を求めるはずです。しかし、これができないように巧妙な罠がはられていました。

Secret Technology Limitedの契約には「集団訴訟の権利を放棄する」という条項が盛り込まれており、Secret Technology Limitedに訴訟を起こすことができないようになっているのです。そのため被害者は仕方なく個人であるYannを訴えたというわけです。

この事件、仮想通貨市場の深い闇を表しています。早期の解決と今後の予防策が市場の健全化に必須です。