世界各国は金融商品によるトラブルから投資家を守るために金融機関や市場を監視するための規制当局を設置しています。
仮想通貨が登場してからは、世界各国の規制当局が既存のルールや新たな規則を打ち出しています。
仮想通貨に対して寛容な国として知られるスイスではThe Swiss Financial Market Supervisory Authority(FINMA)という機関が金融市場を監視し、仮想通貨に対しての規則を発表しています。
FINMAとは
スイスの規制当局FINMAは2007年に可決された「スイスの金融市場監督局に関する連邦法」に基づいてスイス連邦保険局、スイス連合銀行委員会、スイスマネーロンダリング管理局を統合する形で設立された機関です。
債権者や投資家、被保険者と言った金融市場の顧客や金融システムを保護し、誰もが安全に投資をできる環境作りを進めています。
FINMAは金融市場で多くの権限を持ち、非常に広い範囲の業務を行っています。
例えばマネーロンダリング対策はFINMAの主要な業務のひとつです。
スイスの銀行は匿名性や守秘性が高く、長くマネーロンダリングの温床となっていました。
第二次世界大戦の頃にはナチス・ドイツの資産を管理していたことも明らかになっています。
FINMAはそんなスイスの銀行にも厳しい目を向けており、2018年9月17日にスイス第2の銀行であるクレディ・スイスに対し、2度の資金洗浄法違反があったことを発表、勧告処分を下しました。
このようにFINMAは多くの権限のもと、素早く有効な対策を講じています。
FINMAはICOのガイドラインを発表している
FINMAは他の金融商品同様に仮想通貨の規制当局としても権限を持っており、2018年2月にICOについてのガイドラインを発表しています。
このガイドラインはICOをむやみに規制するものではなく、スイス国内の金融市場を規制する法律をICOの規制に適応させることでICOの透明性を維持するためのものです。
FINMAのガイドラインではICOで発行するトークンを「決済トークン」、「ユーティリティトークン」、「資産トークン」の3つに分類し、それぞれに法律を当てはめています。
スイスは仮想通貨の分野で先進的な国であり、FINMAの定めたガイドラインは他の国にも影響を及ぼしています。
オーストラリアやシンガポールはFINMAの提案に似た、現行法に沿ったICOのガイドラインを発表しました。
実際にFINMAがICOを規制した例
2018年7月、FINMAはEnvion AGというスタートアップが行ったICOに金融サービス市場法違反の疑いが見られると発表し、処分の執行を行っています。
Envion AGは高い収益性を持つマイニングインフラストラクチャの構築を目指すプロジェクトで、ICOで約3億人もの投資家から約1億フラン(約110億円)もの資金を集めました。
FINMAによるとEnvion AGはスイス国内の規制で許可されていない、公金預金の受け入れを行ったことが調査により明らかとなったとのことです。
また他にもEnvion AGの経営者は複数の違反行為をしている可能性があり、公金預金の受け入れもスタートアップそのものの問題ではなく、経営者側の問題とされています。
FINMAはもし企画そのものは規制に触れないものであっても、ビジネスモデルが規制に触れるケースもあり、ガイドラインで対策を講じていること、また投資家に対して改めてICOのリスクを注意しています。
仮想通貨に対して先進的な国であるスイスの規制当局であるFINMAの取り組みは多くの国でロールモデルとなる可能性があるため、今後も注目をしていくべきでしょう。