選挙の投票でのブロックチェーン技術の応用が注目されている

中央管理者を持たず、改ざんができないブロックチェーン技術は仮想通貨のほかにも、多くの分野での応用が期待されています。

中でも注目されているのが選挙の投票機能への応用です。

選挙は昔から不正投票が横行しており、現代でも国際連合は東ティモール独立を決める住民投票など、発展途上国への選挙に選挙監視団を派遣しています。

先進国でも投票機能をブロックチェーンで自動化することで、選挙のたびに選挙管理委員会を組織する必要がなくなり、選挙費用を大きく抑えることが可能になります。

スイス・ツーク州でブロックチェーン投票を実施

2018年6月25日から7月1日の間、スイスのツーク州州都ツークで、世界初となるブロックチェーン技術を使った投票実験が行われました。

ツークはブロックチェーン技術に対して好意的な自治体で、多数のブロックチェーン関連企業が集まる「クリプトバレー」として有名で、住民サービスにもブロックチェーン技術を導入しています。

ツークではいくつかの公共料金は既に仮想通貨で支払うことができるほか、2017年11月には電子身分証明書を導入しています。

投票実験はこの電子身分証明書のシステムを利用し、「uPort」というアプリで行われました。

スイス政府は2019年末までにスイス26州の3分の2以上が電子投票に賛成することを目標としてきましたが、2019年6月には技術的な問題により全面的な導入は見送られています。

しかし試験導入は今後も続けられる方針です。

他の国のブロックチェーン投票の現状

ブロックチェーン技術を使った投票は、ツーク州のほかにも小規模な選挙で導入事例は少なくありません。

アメリカ合衆国コロラド州デンバーの州議会では、投票用ソフトウェアを開発する「Voatz」の協力のもとブロックチェーン技術を使ったアプリケーションでの投票を導入しています。

日本でも2018年8月20日、茨城県つくば市の実施する「Society 5.0 社会実装トライアル支援事業」での支援事業を決める投票で、日本で初めてブロックチェーン技術とマイナンバーを利用した電子投票が行われました。

つくば市の投票ではつくば市役所にある専用のパソコンでマイナンバーカードを読み込み、電子証明書の署名用パスワードを使って本人確認を行って投票しています。

ノード数も少なく、手軽でもありませんが、つくば市での電子投票を実現させた株式会社VOTE FORは今後はスマホなどで投票できるような仕組みを作る方針を明らかにしています。

更に2019年6月22日には、ソフトウェア開発企業であるアステリアが株主総会での投票にブロックチェーン技術を導入しました。

ブロックチェーン技術を使っての投票率は、全体のおよそ20%ほどだったそうです。

ブロックチェーン投票のメリット・デメリット

ブロックチェーン技術を使った電子投票にもメリットとデメリットが存在しています。

まず第一のメリットはスマホなどで投票ができることで、わざわざ投票所に行かずとも手軽に投票できる点にあります。

投票所の遠くに住んでいる人などが投票できるなど、投票率の上昇が期待できます。

電子投票であれば記入ミスによる無効票も減少します。

一方、投票システムがハッカーなどの悪意ある攻撃にさらされた場合、投票の秘密が守られないというリスクがあります。

投票時のデータ集計も不透明なまま投票結果が明らかになるため、意図的な改ざんが行われたとしても公表されず、投票システムの出した結果を盲目的に信用しなければならないという不安点もあります。

また電子投票は導入コストも高く、ITインフラが整備されていない地域では紙を使っての投票よりも一票の費用が高くなってしまいます。

今後、本格的に電子投票を導入するうえではこのメリットやデメリットを冷静に吟味する必要があるでしょう。