5月末、イングランド中央銀行総裁であるマーク・カーニー氏は仮想通貨に対して今までとは異なった見解を発表し大きな物議をかもしています。
今までは仮想通貨の不安定さや保存場所などに不安が残ることを理由に通貨としての価値を否定してきました。
しかし今回の発言では仮想通貨への不安は残るもののCBDCの導入には反対しないという考えを述べた上で、どのようなものがCBDCに大きな影響を与えるのかということも発言しました。
今回カーニー氏が発言で「CBDCの脅威になる」と示したものは預金や融資を主な収入源としている商業銀行の存在です。
通貨である限り使用されなければならない、という考えをもとにすると、市民の財布と言える商業銀行が脅威になると考えているのです。
イングランド中央銀行は今後どのようにしてCBDCの導入に向け動いていくのでしょうか
CBDCとは?特徴は
CBDCとは法定デジタル通貨のことで、各国の中央銀行が導入を検討しているものです。
日本の中央銀行である日銀は導入の予定はないとしていますが、ヨーロッパ各国ではユーロ導入の実績もあったことから、早い時期から法定デジタル通貨の導入を検討していました。
またキャッシュレスが特に進んでいる韓国や中国でも導入に向け前向きに検討されています。
G20での見解では、現在の仮想通貨は通貨としてではなく資産としてみなされており、そのままでは通貨としては利用しづらいとしています。
そのため国が価値を安定させるために介入できるCBDCの導入を検討していますが、厳密にはCBDCは仮想通貨でも暗号通貨でもありません。
CBDCの発展性や、周囲の見解は?
CBDCは前述の通り多くの国が導入を検討していますが、今の所どの国も導入には至っていません。
しかし、数年前からヨーロッパの国が2020年を目処に導入を発表するだろうと言われています。
ただし、前出のカーニー氏はイングランド中央銀行がすぐに導入することはないと明言しています。
現金主義の国をのぞいて多くの国がキャッシュレスに向かっています。
CBDCはデジタルウォレットで保管し、現在の電子マネーのように利用した上で、いつでも残高や取引状況を確認できることが強みとなる見込みです。
しかし脅威となるのは市民の財布となっている商業銀行です。
現在民間運営の商業銀行が市民や企業の金融資産を管理していますが、CBDCが支払いの中心となった場合、中央銀行が市民や企業の金融資産を管理することになります。
商業銀行は扱うサービスがなくなってしまうため反発すると推測されているのです。
国際決済銀行(BIS)では商業銀行のために現在の預金口座サービスに変わる商品を提案しなければCBDCを導入することは難しいだろうとしています。
イングランド銀行の仮想通貨情勢
イギリスはユーロ導入の際、EU加盟国でありながら通貨統一を拒否した国でもあります。
それだけ通貨に対しこだわりがありますが、ここ数年はキャッシュレスへシフトしている傾向にあります。
10年以内には完全なキャッシュレスも可能だと言われており、その一端を担うのが仮想通貨やCBDCです。
現金主義の高齢者も多くいるイギリスにおいて仮想通貨が受け入れられようとしている背景として、王立造幣局である「Royal Mint」が金を仮想通貨に交換する「Royal Mint Gold(RMG)」の発表をしたことが考えられます。
比較的価格が安定しているものの、価値の上下がある金を価格が変動する仮想通貨に変え流通をうながそうとしています。
また保守的な考え方も多い中、新しいもの好きなロンドンっ子たちはかなり早い段階から仮想通貨に親しんでいました。
2011年にはBitstampが設立されヨーロッパでは人気No.1の取引所です。
他にもイギリス最大の取引所であるHYCMでは初心者トレーダーへのチュートリアルビデオや電子書籍を公開し、利用者を育成するプログラムを実践しています。
その実績は最大の取引所であることが示しています。
最後に
仮想通貨の価格が大きく揺れ動く中、電子マネーなどを利用したキャッシュレスの流れは止めることができず、現状のままでは価格が安定しない仮想通貨も通貨としての利用が広まろうとしています。
イングランド中央銀行のようにすぐに導入はしないとしても、近い将来CBDCを利用した生活は実現し、さらには自国のCBDCのままで海外旅行で買い物をするという日も来ると推測されます。