仮想通貨を利用した資金調達であるICO(Initial Coin Offering)は、最近の劇的に普及しています。しかし普及している一方で、投資家がプロジェクト団体に対して起こす証券集団訴訟が多数発生しています。
仮想通貨の取引は国境を越えるという性質を持っており、そのためこれらの訴訟には管轄上の問題やその他の懸念があり、たくさんの斬新で興味深い問題が提起されているのです。
2018年8月7日、カリフォルニア州北部地区のTezos ICOに関連する証券集団訴訟について、シーボーグ判事は判決を下しました。
シーボーグ判事の判決には、米国の証券法が適用されるかどうかを判断するため、実施されたICO取引の場所に関する興味深い分析が含まれています。どういった内容でしょうか。詳しく説明していきます。
- 事件の背景
- 判決の結果
- 実際に取引が行われた場所が重要
事件の背景
Tezosブロックチェーンプロジェクトは、カリフォルニア州北部に本拠を置くArthur BreitmanとKathleen Breitman夫妻によって企画されました。そして夫妻が経営する会社にDynamic Ledger Solutionsがあります。
TezosのICOの計画段階で、ベンチャーキャピタリストのTimothy Draperは、DLSに少数投資をしました。
Breitman夫妻とDLSは、計画されたICOを監督するため、スイスで非営利団体であるTezos財団を設立しました。
さらに、Bitcoinスイスという団体は、米ドルのBitcoinおよびEtheriumへの変換やデジタルウォレットの作成など、予定されているICOに関連する仲介サービスを提供しました。
TezosのICOは、2017年7月14日に締め切られ、BitcoinとEtheriumで約2億2,300万ドル相当の資金を獲得しました。
しかし2017年11月、多くの投資家が、Breitman夫妻、DLS、Draper、Tezos財団、Bitcoin Suisseに対して訴訟を起こしました。その内容は、「米国の連邦証券法に違反している未登録証券を販売した」という主張です。その主張をもとに、米国で証券集団訴訟を提起したのです。
判決の結果
この訴訟のポイントは、被告に対して米国の法律が適用されるかどうかです。
Tezos財団は、財団の本拠地があるスイスであるので、米国の法律で裁かれるべきではないと主張しました。
シーボーグ判事は、2018年8月7日の判決を下しています。
まず、シーボーグ判事は「財団は、米国市民がICOに参加するよう奨励し、そうすることを容易にした」とし、結果として、財団は米国に拠点を置いていたとしています。
またシーボーグ判事は、契約上本拠地が置かれている場所ではなく、実際に取引が行われた場所を重要視しました。
そのためTezos財団の主張を拒否し、米国の法律が適用されるとしたのです。
ただしシーボーグ判事は、潜在的な責任を引き起こすために取引に十分に関わっていないと判断し、DraperとBitcoin Suisseを被告から外しています。
実際に取引が行われた場所が重要
裁判官シーボーグの意見は、これらのICO関連の事案が提起する最も根本的な問題には至らず、すなわち、Tezosのコインまたはトークンが有価証券であるかどうかの問題に言及していません。
しかしおそらく、シーボーグ判事の功績は、米国の証券法が、インターネットの曖昧な定義において起こっている取引に適用されると判断したことでしょう。
これらのケースの多くで、裁判所でシーボーグ判事が述べたように、「インターネット上で購入され、ブロックチェーン上で記録された未登録の証券の販売が、実際にどこで行われているか。」が重要なポイントとなっています。
米国で行われたのであれば米国の証券法が適用されるとしたのです。
まとめ
米国における証券訴訟の対象となっているICOの大半は、外国の被告および企業が関与しています。
これらの事件は、外国の当事者に対して米国の証券法が取引に適用されるかどうかという疑問も提起しています。
シーボーグ判事は、これらの疑問点に最初に取り組んでおり、彼の判決は興味深く、他の訴訟の判決にも影響を与える可能性があります。
今後の動向に注目していきましょう。